開発ストーリー

なぜステレオカメラなのか?
アイサイトが「人の目」にこだわった理由。

すでに80年代中盤からステレオカメラの研究を進めていたSUBARUは、1989年にはステレオカメラによる運転支援技術の開発をスタート。各社でASV(先進安全自動車)の開発が始まっていた当時、一般的だったミリ波などのレーダーが検出できるのは、おもに対象物の存在と距離だけ。形状やそれが何なのか、路面の白線や、どこまでが路面でどこからが障害物なのかも捉えきれません。

1997年のステレオカメラ量産試作機。正確な立体視を支える、二つの目の間隔の精度にこだわった設計が見てとれる。
ステレオカメラは人の目のように対象物の位置、形状、動きを立体視。「レーダーでは歩行者や自転車を認識できず、最も守るべき交通弱者を守れない。」「人に作られた交通社会は、人の目で見るように出来ている。」「一種類のシステムで必要な情報をカバーできるのは、運転する人の目と同じステレオカメラだけ。」・・・当時の開発者たちの言葉から、ステレオカメラへの確信とこだわりが伝わります。
そして1999年、アイサイトの原型となる世界初のステレオカメラ運転支援システム
「ADA(Active Driving Assist)」が登場します。
1998年のヘリコプター用ステレオカメラ。洋上着艦や農薬散布にも応用されるなど、航空機部門を持つSUBARUの多彩な経験もステレオカメラのバックボーンになっている。

普及してこそ、事故を減らせる。
「プラス10万円で付けられる先進安全」へのこだわりと試行錯誤。

  • 2003年。ブレーキ制御付クルーズコントロールのためミリ波レーダーを追加されたADA搭載車。
  • 2006年。コストダウンを図ったレーザーレーダー単体のSI-Cruise搭載車。

ADA登場から4年後にはミリ波レーダーが追加され、価格はプラス30~50万円に上がり販売は苦戦。2006年にはレーザーレーダー単体のSI-Cruiseに主役を譲ります。
それでもステレオカメラの技術を磨き続けていたSUBARUは、ステレオカメラだけですべての制御を行う初代アイサイトを2008年に発売し、2010年には「ぶつからないクルマ?」のキャッチコピーとともにアイサイトVer.2が登場。プラス10万円で実装できる先進安全は、3年で販売10万台、5年で30万台に達し、アイサイト搭載車の事故を6割減、追突事故では8割減を実現しました※1

2008年。ステレオカメラだけでプリクラッシュブレーキと全車速追従機能付クルーズコントロールを実現した初代アイサイト搭載車。当時は完全停止までは謳われていないが、技術の進歩に行政が追いついた2010年には「ぶつからないクルマ?」アイサイトVer.2がブレイクする。

「売れない時も粘り強く開発するから技術が育つ。」「そして売れてこそ事故を減らせる。」。今でこそ各メーカーに広まったステレオカメラ技術は、理想も現実も見据えたSUBARUらしい技術者魂に、守り育てられてきました。そしてステレオカメラだけでなく、当時世界初のセンサーフュージョンやSI-Cruiseで培われた技術もまた、その後のアドバンスドセイフティパッケージや360°センシング、アイサイト・ツーリングアシスト等に活かされているのです。

  • 公益財団法人交通事故総合分析センターのデータを基に、2010 ~2014 年度国内販売のアイサイト搭載可能モデル(搭載車246,139 台、非搭載車48,085 台)の人身事故件数を発生状況毎に分類し独自に算出。

いちばん「運転のうまい」先進安全へ。
膨大な走り込みと、進化を続けるAI の高度な融合。

「雪道のスバル」を支えてきた氷雪の北海道・美深試験場に、新たに完成した高度運転支援技術テストコース。
高速道から市街路まで多彩なシチュエーションを再現している。

よくアイサイト・ドライバーのお客様に「制御がスムースで違和感がない。」「プロドライバーの危険回避のようだ。」と言っていただけるのも、理論だけではない徹底した走り込みがあってこそ。
例えばアイサイトVer.3のシステム緊急停止試験だけでも、米国から北欧まで世界のあらゆる環境で、地球2周半もの走り込みを実施。水平対向エンジンやシンメトリカルAWDがもたらす正確なハンドリングとともに、狙い通りの制御を可能にしています。もちろんプロドライバー達の膨大なフィードバックを制御に落とし込むには、高度な解析・演算技術が不可欠。
SUBARUは2017 年 に北海道・美深の「高度運転支援技術テストコース」を完成させると、2020年には東京・渋谷にAI開発拠点「SUBARU Lab」を開設。人の感性とAIのアルゴリズムを融合した、いちばん「運転のうまい」先進安全へ。2030年の死亡事故ゼロを目指して、SUBARUはアナログとデジタルの両輪で走り続けています。

東京・渋谷に開設されたAI開発拠点SUBARU Lab。2021年にはアイサイト公開画像データの物体速度検出アルゴリズムが一般公募され、150人を超える応募が集まっている。

まさに“アイサイトルール”。ただの総ナメ受賞ではない、
安全評価の世界基準を変えた歴代アイサイト。

クルマ関係のニュースに目を通される方なら、「またSUBARUが安全の賞を取ったのか。」と、もう聞き飽きたかも知れません。でもアイサイトの受賞歴には、もっと特別な意味があります。
例えば2013年には米国道路安全保険協会IIHSで、初めて前面衝突予防試験が実施され、アイサイトは当然のように最高評価「Superior」を唯一最高得点で獲得。やや遅れて2014年には、日本の国土交通省/NASVAでも予防安全性能アセスメントが初施行され、最高評価「JNCAP先進安全車プラス(ASV+)」に認定。評価基準の整備が追いついていなかった先進予防安全で、“初代チャンピオン”に輝いてきた日本のアイサイト。まさに“アイサイトルール”が出来たことで、世界中のライバルがアイサイトを目指して安全技術を磨き、クルマ社会全体の先進安全が底上げされていった・・・それは華やかな受賞歴よりも、はるかに意義のある事かも知れません。
そして2022年10月現在、米国IIHS安全評価最高のトップセイフティピックプラス(TSP+)累計獲得数が66に到達。今なおリアルタイムで、単一ブランド最多記録を更新し続けています。

先進性や高評価だけでなく、すでに500万台が世界を走り、
多くの命を守ってきた実績がある。それがSUBARUのアイサイト。

2022年6月、アイサイト搭載車の世界累計販売台数が、500万台を突破しました。実験的な新技術を超えて、すでに熟成の域に達したSUBARUの先進安全。最新の国内調査によると、SUBARUの「総合安全」によって死亡重症事故数が10年で約50%低減。アイサイトVer.2は追突事故を84%減らし、アイサイトVer.3の追突事故発生率は0.06%に至っています。
ゲームでもエンターテイメントでも無い、命をあずかる安全システムにとって、その実績は先進性と同じくらい重要なものです。先進性や高評価だけでなく、膨大な走行台数や事故低減の実績もあわせ持つのが、歴代アイサイト搭載車なのです。

  • グラフ:販売台数100万台あたりの死亡重症事故数
    • ※公益財団法人交通事故総合分析センターのデータを基にSUBARUが独自に算出(重傷含む)
    • ※対象は、各年の過去5年の販売車
  • グラフ:アイサイト搭載車の追突事故・歩行者事故発生率グラフ
    • アイサイト(ver.2)搭載車
    • 公益財団法人・交通事故総合分析センター(ITARDA)のデータを基に独自算出 詳しくはこちら
    • アイサイト(ver.3)
    • 2014年~2018年に発売したアイサイトVer.3搭載車数(456,944台)と、公益財団法人・交通事故総合分析センター
      (ITARDA)のデータ(追突事故数:259件)より、SUBARUが独自算出。 詳しくはこちら

すべての移動に感動をもたらす、
日本のハイウェイを知りつくした「アイサイトX」。

  • 広角ステレオカメラと4つのセンサーによる360°センシングにより、さらに多様なケースへの対応を実現する新世代アイサイト。
  • アイサイトXを支える準天頂衛星みちびき。GPS電波の届きにくいビルの谷間や山間部でも、安定した高精度自車位置測定を可能にする。
    • ※協力:内閣府

2023年3月現在最新バージョンのアイサイトは2020年、日本専用車レヴォーグに初採用され、広角ステレオカメラと4つのセンサーによる360°センシングを実装。例えば先行/対向車だけでなく交差車両にもプリクラッシュブレーキを作動させ、ブレーキだけで回避しきれなければステアリング回避も加え、後ろから迫る他車に気付かず車線変更しようとすればステアリング制御を行うなど、より多様なケースに対応しています。
この新世代アイサイトには、先進運転支援システム「アイサイトX」も組み合わせ可能。日本の準天頂衛星みちびきを利用した高精度3Dロケーターが車線単位で自車位置を測定し、高速道の長い渋滞や都市高速の複雑なカーブ・料金所などもストレスフリーでクリアできる、これまでとは次元の違うアクセル・ブレーキ・ステアリング制御を実現。
日本のハイウェイを知り尽くしたアイサイトXで安心・快適に移動し、SUBARUらしい意のままの走りをワインディングで愉しむ。ドライバーのストレスとケアレスミスを減らし、すべての移動に感動をもたらします。

万一の事故時も24時間365日コールセンターにつながり、エアバッグ作動時は自動通報も行う最新のコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」。予防安全や衝突安全を究めた先の「つながる安全」は、SUBARUが目指す2030年死亡事故ゼロへの最後のピースとも言える。

開発史

  • 1989
    80年代中盤から研究を進めてきたステレオカメラによる、運転支援技術の開発がスタート。
  • 1999
    世界初のステレオカメラ運転支援システムADA登場。各種警報&シフトダウン制御、車間距離制御クルーズコントロールなどを実用化。
  • 2003
    ADAにミリ波レーダーを加えたセンサーフュージョンにより、ブレーキ制御付クルーズコントロールを実現。2006年にはレーザーレーダー単体のSI-Cruise車も発売。
  • 2008
    先進安全運転車SUBARU ASV-4の公道実証試験を終了。
  • 2008
    初代アイサイト登場。プリクラッシュブレーキ、全車速追従機能付クルーズコントロールなどを実用化。
  • 2010
    アイサイトVer.2登場。プリクラッシュブレーキ/全車速追従機能付クルーズコントロールの完全停止対応を公表。
  • 2010
    日本自動車殿堂カーテクノロジーオブザイヤー
  • 2010
    RJCテクノロジー オブ ザ イヤー
  • 2011
    アイサイト搭載車を豪州で発売。以降2012年に北米、2014年に欧州、2017年にロシア、中東、アフリカ、東南アジア、南米にも展開。
  • 2012
    文部科学大臣科学技術賞
  • 2013
    新機械振興賞経済産業大臣賞
  • 2013
    アイサイト搭載車国内販売10万台突破。2015年には30万台、2017年には50万台に到達。
  • 2013
    米国道路安全保険協会IIHS初の前面衝突予防試験で最高評価「Superior」に。以降もトップセイフティピックプラス(TSP+)など含め多数獲得。
  • 2014
    アイサイトVer.3登場。カラー画像認識、ステアリング制御などを実用化。
  • 2014
    国土交通省/NASVA初の予防安全性能アセスメントで最高評価「JNCAP先進安全車プラス(ASV+)」に。以降もファイブスター賞、ASV+++、過去最高得点(大賞)、特別賞など含め多数獲得。
  • 2014
    欧州ユーロNCAP最高評価「ファイブスター」に。以降もベスト・イン・クラス賞など含め多数獲得。
  • 2015
    アドバンスドセイフティパッケージ搭載車発売。車体周辺モニターや警報機能を強化。
  • 2015
    運転支援システム初のグッドデザイン金賞。車両としては、2012~2015年にかけてインプレッサ&SUBARU XV、フォレスター、レヴォーグ、レガシィB4&アウトバックもグッドデザイン賞を受賞。
  • 2016
    日本カー・オブ・ザ・イヤー(インプレッサ)。
  • 2016
    国産初の歩行者保護エアバッグ搭載車発売。
  • 2016
    アイサイト搭載車 世界販売100 万台突破。
  • 2017
    アイサイト・ツーリングアシスト登場。全車速域でアクセル・ブレーキ・ステアリング制御。
  • 2017
    高度運転支援技術テストコースが北海道・美深に完成。
  • 2018
    科学技術と経済の会(JATES)技術経営・イノベーション賞において科学技術と経済の会会長賞
  • 2018
    ドライバーモニタリングシステム搭載車発売。
  • 2020
    新世代アイサイトおよび高度運転支援機能アイサイトX登場。広角ステレオカメラ&360°センシング、GPS/準天頂衛星による 高精度3Dロケーターなどを実用化。
  • 2020
    アイサイトとAIの融合を進める開発拠点「SUBARU Lab」を開設。
  • 2020
    日本カー・オブ・ザ・イヤー(レヴォーグ)。
  • 2021
    FRピュアスポーツSUBARU BRZのAT車にアイサイト搭載。
  • 2022
    アイサイト搭載車 世界販売500 万台突破。
  • 2022
    米国IIHS安全評価最高のトップセイフティピックプラス(TSP+)累計獲得数が66に到達(単一ブランド最多記録更新中)。
  • 2022
    新世代アイサイトのステレオカメラに広角単眼カメラを追加。